担当者が苦心して資料を集めても、すぐに見つけられなかったり、せっかく見つかった資料がボロボロで利用に耐えない状態では、その努力は帳消しになってしまいます。できるだけ手間はかけず、図書室をすっきりと見た目良く整備するには、どんな作業が必要なのでしょうか。

装備は必要性に応じて考える

装備とは、蔵書印を押印したり、図書ラベルを貼ったりといった、受け入れした書籍や雑誌等を書架に出す前に、「図書室用の服を着せる」作業のことです。

まず蔵書印について、特に決まりはありませんので、小規模な図書室では必須の要素ではないかもしれません。ただし、利用者のデスクの周りは資料が山積みでどれが図書室の蔵書なのかわからない、また、人気のある資料は複数人が所蔵していて取り違える可能性もあります。本が積み上げられている中でもわかりやすい場所(本の上部(「天」)や綴じられている逆側(小口))に組織名や所有者がわかるように押印する、また、複本がある場合には受入日の日付印を押しておけば、後に整理する際の参考になります。

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ラベルは、所蔵する資料の量によってはシールで色分けする程度でも足りるかもしれませんが、その資料の配架場所を明らかにする要素ですので欠かせません。一般的な図書ラベルは、大きな文具店やネット通販等で簡単に購入できます。分類記号のほかに著者名や書名を表す要素(頭文字等)、シリーズものの場合は巻次等を記入しておき、ラベルを見れば、誰でも持ち出された資料をスムーズに戻せるようにします。かつて司書の講座では、ラベルの文字を均等に美しく記入するため、お手本を見ながら数字を練習する講義などもあったのですが、現在は印刷が容易になりました。手書きに問題があるわけではありませんが、見た目の統一感は印刷が勝ります。もちろんLXにもラベル印刷機能がありますので、用紙やデザインについて、LX担当者にご要望をお知らせください。

また、学校や公共図書館の蔵書のように、資料全体にフィルムを貼れば、汚れや傷みを防ぐことができますが、少ないスタッフではそれだけでかなりの作業量ですし、費用もかかります。フィルムをかけた状態の納品に対応してくれる書店や、装備全般のアウトソーシングを頼める会社もあります。

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フィルムかけは省略、と選択した場合には、書籍のカバーをどうするかが問題になります。そのままにしておけば傷みやすく、容易に外れてしまうため、最初からオビ等と一緒に廃棄してしまうこともあるようです。それで利用上は問題ありませんが、書架に並べたときには変化に乏しく、見つけにくくなるかもしれません。色の記憶は案外重要で、「以前に、確か赤い表紙の本に、探している情報が載っていた気がするのですが」などの問い合わせが来ることもあります。ひと手間かけるなら、図書館向けの、紙を傷めにくく劣化しないテープで本体に留めておけば、ある程度の期間はもちます。

フィルムかけだけでなく、装備の作業は蔵書量、利用者数、貸出の頻度、蔵書の維持・保存等と関わってきます。特に少ない人数で運営する図書室では、省力化を進めることもあるでしょうから、作業の必要性を確認しながら検討することが大切です。また、蔵書印が好き勝手な場所に押してあったり、ラベルを貼る位置がまちまちだったりすると、管理が行き届いていない印象を与えてしまいます。細かな点(蔵書印はどのページに押すか、カバーやオビの扱い(資料に貼り付けるか廃棄するか)、ラベルを貼る位置(下から〇㎝)等)までマニュアルを作成し、作業者によってばらつきがでないよう心がけましょう。

持続可能なサイン(掲示)とは

初めて利用する人も、目指す資料へスムーズにたどり着けるように、図書室内のサイン(掲示)は必須の要素です。

  • 配架図
  • 書架側面の内容掲示
  • 棚に置く仕切り板

ただし、蔵書の増加など、書架構成には変化がつきものです。書架の移動があった場合、サインがそのままでは見つかるものも見つかりません。どんなにデザインにこだわり、オーダーメイドで作成した配架図も、変更だらけでは役立たずです。泣く泣く移動先を上から手書きやテープで貼り付ける、そんな事態にならないために、サインは誰でも簡単に作成・変更可能な方法を検討しましょう。

たとえばハード部分だけは既製品を利用し、中の情報は自前で作成する方法があります。テンプレートが用意されていますので、必要な情報に書き換えて自前のプリンターで印刷、ハード部分に差し込むだけですが、書体等が統一されるため、かなり見栄えがよくなります。蔵書の増加で資料を動かす必要がある場合にも、容易に対応できます。

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図書室内の配架図は、図面作成ツールを操作できればもちろん一番良いですが、スタッフだけの力では難しいかもしれません。そうなると、作図の専門家に外注して変更が可能な状態で納品してもらうか、汎用的なソフトウエア(エクセルやパワーポイント等)を活用して自前で作成することになります。自前で作成する場合、図書室専用のものは見つかりませんでしたが、「オフィスレイアウトのテンプレート」でネット検索するといろいろなパターンが出てきます。図書室全体を再現するのが面倒なようなら、書架の数だけ枠を作り、枠のなかにその場所に置かれている資料の分類名等を明示すれば、十分役に立ちます。最初は時間がかかるかもしれませんが、大枠を作ってしまえば、変化への対応が容易になります。分野によって色分けするなど分かりやすい配架図になるよう、少しずつ工夫を重ねるとよいでしょう。

退色しやすい色を避ける

印刷物は光の影響を受けやすく、時間が経つにつれ、白っぽくなってしまうことがあります。図書館専用のラベルには「耐光性インク(光の影響を受けないよう加工されたインク)使用」と唄われていることがありますが、これは退色をできるだけ避けるためです。黄色や赤色は特に影響が出やすく、逆に黒色や青色は比較的強いことが分かっています。

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ここは目立たせよう!と装備やサインに黄色や赤色を選択すると、いつのまにやら色あせてしまうかもしれません。

黒色や青色は単独では少し地味な印象ですが、色あせには強いため、次のようにひと手間かけて、利用してみてはいかがでしょうか。

上記の数字は同じ大きさです。白抜きにすることでくっきりと目を引くようになります。

破れたり汚れたり、資料の修理はどこまで誰が?

利用の多い本ほど破損も多い、それはどんな図書室も抱える悩みです。壊れてしまった資料は誰がどのように修理すれば良いのか、図書館界では資料保存・修復の研修等も実施されているのですが、小さな図書室スタッフにはなかなか触れる機会がないかもしれません。どうしていいか分からないから、と放置しておいては誰も利用できず、「図書室には必要な資料がない」「役に立たない」という悪循環に陥ってしまいます。

ページが破れた、または外れてしまった、背表紙の上部が壊れた(指をかけて強引にひっぱり出すことが原因)程度の破損なら、下記の書籍では、とにかく棚に出せる状態まで戻す簡単な修理方法を紹介しています。対象としているのは児童書(子どもが扱うため、非常に破損しやすい)ですが、保存より利用を重視する企業等の図書室にも役立つ内容です。

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図書館用品を扱うメーカーでは、図書修復専用のテープやフィルム、接着剤などを多数扱っていおり、修復方法等が紹介されていることもあります。

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図書館向けの材料は、文具店で手に入るものに比べて割高に感じるかもしれませんが、資料にできるだけ負担をかけず、劣化しにくい等の特長があります。余裕があれば、小さな修理が迅速にできるよう、少しずつでも揃えておきたいものです。

とはいえ、図書室のスタッフにできることは限られます。ほとんどのページが外れてバラバラになってしまった、濡らしたり飲み物等をこぼしたりして文字が読めなくなってしまった、手の施しようがないような災難にあった資料でも、利用が多いものなら、なんとか書架に戻さなければなりません。

修復の専門会社に依頼する

雑誌の合冊製本(保存のため一定期間の雑誌をまとめて製本すること)会社では、修復作業を取り扱っているところもあります。プロの手で堅牢に再製本してもらえますので耐久性がありますが、相応の費用と時間はかかります。その間資料は利用できないことを周知することも必要です。

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再購入

修復する方が高くつきそう、とにかくできるだけ早く必要、そんなときは再購入が最善の策のように思います。が、破損するまで利用された資料は刊行からある程度時間が経っていることが多く、そういった書籍、雑誌を入手するのは、思いのほか困難な場合も少なくありません。版元で品切れ、絶版になっていた場合、まず探すのは古書店ですが、古書店を横断検索できるサイトが、すべての店舗の全商品を網羅しているわけではないですし、需要の多い資料は驚くほど高額なこともあります。図書室の専門分野に強そうな古書店については、カタログ等を入手しておき、どのような品揃えなのかチェックしておくと良いでしょう。また、数は限られており(明治期以降、1995年までに整理された図書等)、個人向けのサービスですが、入手困難な資料について国立国会図書館デジタルコレクションで提供されています。

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装備やサイン、修理は、選書や受け入れとは違う、手先の器用さやデザインのセンスも関わってくる作業ですので、「ちょっと苦手」な人もいるかもしれません。ただ、こういったところをおろそかにすると、なんとなく古くさい、ごちゃごちゃした印象の図書室になってしまいます。図書室の運営にはどれも必要な要素ですので、できる範囲から小さな作業も丁寧に、時間と費用が許せば時には外部の力も借りながら、進めていきましょう。

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