本を「並べる」から「分類する」へ

集めた資料等はどのように並べ、利用者に提供しているでしょうか。

数十冊程度でしたら、入手した順番にどんどん置いていけば良いかもしれません。それが数百、数千と増えていった場合、たとえば大きさで揃えたり(小さい本と大きな本)、よく利用する資料は目の付きやすいところにまとめてみたり、だんだんと工夫が必要になってきます。どのように並べたらいいのだろう、と悩むようでしたら、少しハードルが高いように思われるかもしれませんが、「分類法」を採用・作成することをおすすめします。同じ主題(テーマ)の資料を集めておけば、より効率的な調査が可能になるからです。

日本十進分類法と独自分類

もっとも身近な分類法は、公共図書館等多くの図書館が採用している「日本十進分類法(Nippon Decimal Classification(NDC)」です。

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NDCの分類記号は、国会図書館や身近な図書館を蔵書検索してみれば検索すれば判明しますし、解説書等も多数刊行されていますので、「分類とは」をおおまかに掴みたい場合には、まず目を通されると良いかもしれません。

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ただし、広範な利用者を想定する公共図書館とは違い、企業等の図書室は「狭くて深い」収集範囲が特徴です。公共図書館で最も多い小説の蔵書はゼロなのに、一つの分類記号に何百冊も集中したり、また、内容にふさわしい分類記号が見つからない、等の問題が起きかねません。そのため専門図書館では、独自の分類方法を作成・採用することが多いようです。

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びぶろす — B i b l o s  89 号(令和 2 年12月) 特集:支部図書館や専門図書館はどのように蔵書を並べているか

ゼロから分類を作るには

蔵書の情報をある程度データ化できていれば、タイトルだけでもすべてプリントアウトしてみます。そこまで作業が出来ていない場合は、実際に書架に立ってメモしていっても良いでしょう。まずは大まかで良いので、その資料の主題となる言葉をチェックし、同じワードが複数回出現するようなら、数をカウントしていきます。リストアップした言葉を並べることで、なんとなく分類らしきものが見えてくると思います。

一つのテーマについての資料があまりに多い場合は、サブとなる主題、場所(日本、外国(もしくは特定の国)等)、対象者(初心者向け、行政担当者向け等)、年代等に着目して、再度カウントします。同じ「〇〇学」についての資料でも、「〇〇学概論」と「応用〇〇学」では探す目的も対象者も違ってきますから、できるだけ同じ傾向の資料を集めるように工夫していきます。集まった言葉の並べ方は、概念の大→小(総論、概論から各論)と方針を決めておけば、統一感が出ます。

NDCをアレンジする

こちらもある程度のデータ化ができている場合ですが、まずすべての資料にNDCを付与します(国会図書館データも取り込めます(※この後紹介する国会図書館データ取り込みにリンク)。たとえば「農業」はNDCで「610-619」に分類されますが、蔵書のほとんどが農業関係の書籍なら、「610」の「61」は省略し、以下を細分する、といった方法を取ることもできます。

例:「農業法」 NDC611.12  → 112

すでに枠組みが出来ている分、ゼロから構築するよりたやすいかもしれませんが、利用の実際とNDCが合わない場合もあるでしょう。その場合には、ピリオド以下を対象地域や年代等で展開したり、また必要ないと思われる分類を独自のものに差し替えたり、アレンジを加えていきます。いずれの方法をとるにせよ、一度決めた分類法を完全にリニューアルするのは大きな作業となります。利用者や関係者の意見をたんねんに聞いて、書架が探しやすい構成となるよう慎重に進めることが必要です。

分類の実務 「何のための作業か」を常に意識する

分類の対象はどんな資料なのか、まず大まかに把握する必要があります。

  • 何について書かれているか
  • 対象者

等により、ふさわしい分類記号を考えていきます。

その際、すべての資料を隅々まで熟読することは時間的に不可能ですが、前書きや目次、後書き、解説等、「始めと終わり」にはできるだけ丁寧に目を通します。また、カバーや帯、出版社のサイト等も重要な情報源です。国会図書館はじめ、蔵書検索が可能な図書館で、近い内容の資料にどんな分類記号がついているかも参考になります。ただし、公共図書館なら「小説(NDC:913.6)」に分類されている書籍でも、資料として有用な部分があれば、形式ではなくテーマに従って配架して良いこともあります。図書室によっては、池井戸潤の小説を「銀行」や「経営」、また『税金で買った本』(ヤンキー高校生が図書館でアルバイトをするお仕事漫画、リアルな図書館の姿が伝わってくる、と評判になりました)を、「漫画(NDC:726)」ではなく「図書館」や「地方税」に置いてもよいのです。所蔵量が少なければ単独で分類を立てるのは無駄ですし、関連する書籍として目につきやすくなります。

また、分類で悩むのは複数テーマを扱っている場合です。たとえば「野菜と果物の育て方」という書籍があったとします。NDCに従えば、野菜の栽培は「626」、果物の育て方は「625」です。明らかに記述の分量が違う、主たるテーマが明らかで、もう片方はその説明に必要な程度の記述しかない、といった場合は判断がたやすいですが、ほとんど同程度のことも多々あります。NDCでは「3つまでの主題が同程度に扱われている場合は、いずれか一つの(例えば最初の)主題に分類」、4つ以上の場合は「より高次の分類」を付与する、とされています。先ほどの例なら「野菜」もしくは一つ上の概念で「園芸(620)」、あるいは内容が個人向けなら「626.9(家庭菜園)」も考えられます。

ただし収集範囲が狭くて深い企業等の図書室では、事情が違ってきます。複数主題であっても、記述量に明らかに違いがあっても、重要なのは(対象とする)利用者にとって必要なのはどの部分か、という見きわめです。たとえば「東アジアのパンデミック = East Asian Pandemic : 政治・経済学,法制度,観光学の視点から(山口大学大学院東アジア研究科東アジア研究叢書 ; 7 中央経済社)の場合、NDC分類は「498.6(疫学. 防疫. 感染病対策)」ですが、その図書室の収集対象が医学なのか、観光なのか、または経済や国際政治なのかによって、それぞれ異なった分類になるでしょう。その資料はどう有用なのかを考えることが、分類の決め手です。

資料をデータ化する ―目録作業

収集した資料を探しやすくするためには、データ化する必要があります。

その場合、どんな要素が必要でしょうか。書名、著者名、出版社、出版年、内容のあらまし、翻訳資料なら原タイトル、改訂を重ねている書籍でしたら版表示も重要ですし、シリーズで刊行されている資料ならそれも記しておく必要があるでしょう。また、予算を管理するためには価格や入手先、もちろん配架場所がひと目で分かるよう、分類記号(請求記号)も必須です。複本(同一の内容の書籍)が多い場合には、それぞれに個別の番号を付与しないと管理できません。

データ化(目録作成)は、「(パソコン等に)入力していくだけ」の単純作業に見えるかもしれませんが、案外、人によって差が出るものです。たとえば、著者名で姓名の間にスペースをいれるかどうか、非常に長い書名(「〇〇だけが知っている!ついに分かった!誰にも教えたくない△△攻略法!令和X年版 裏□□□マニュアル」)をどう入力するか、ベストセラーはたびたび増刷されますが、出版年は一番新しい年なのか、それとも第一刷なのか。刊行元の「株式会社」「NPO法人」等はそのまま入れるのか、省略するのか、等々。細かくて面倒なようですが、決めごとなしにデータ化すると、見つかるものも見つからなくなります。日本図書館協会が編集する「日本目録規則( Nippon Cataloging Rules、略称:NCR)は、多くの図書館が採用するルールです(最新は2018年版)。

外部リンク参考サイト

データ化に際して、LXでは既成のデータも利用でき、ISBNを読み込むだけで、国会図書館等のデータが取り込めます。逐一入力する手間が不要になり、データの統一性が保証されます。ただし、国会図書館のデータをすべて取り込むと、項目数が非常に多くなりますので、どの部分をどのように取り込むかの取捨選択、調整作業は、LX担当者とよくご相談ください。

データ化はここにひと手間かける

  • 読み仮名を振る

    著者名等の人名は、難読漢字や旧字体等、「なんて読む?」「どうやって入力する?」と検索する側が困惑することがしばしばあります。そういった場合、読みからも検索可能なように読み仮名を振っておくと便 利です。タイトルも同様で、特に最近多いカタカナ語(SDGs、iDeCo等)が表記と読みの両方から検索できるようになり、利便性が上がります。

  • 改訂は目的まで見逃さない

    改訂版では、内容に変更が加えられていますので、それが何のために行われたのか、注目します。法律や制度の変更に伴うものであれば、探す目的にも関わってきますので、必要な要素をデータに加えます。

  • ページ数、大きさ

    検索でヒットしたのに、なぜか書架に見当たらない、そんな時には本の大きさや厚さなど、案外イメージが役にたちます。書影(書籍の写真)も取り込めればさらに良いでしょう。ページ数は、内容の充実ぶり を知る手がかりにもなります。

分類やデータ化は「裏方」の地味な作業ですが、利用者に効率良く資料を探してもらうためには周知がとても大切です。検索のヒントとして、分類表やデータ項目等に目が行くよう、図書室内に掲示したり、検索サイトからリンクさせたり、積極的にお知らせしましょう。

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