はじめに
対象とする図書館
- 館種: 専門図書館(企業研究所、学術団体、官公庁、医療機関、シンクタンク、学校・大学ライブラリ等)
- 運営体制: 専任の図書館スタッフ(司書または専任担当者)を配置し、本格的な図書館サービスを提供
- 蔵書規模: 〜30,000 冊程度(中規模館)
- 想定読者: 図書館スタッフ(現場担当者)
- 本テンプレートが向かないケース: 専任スタッフを置かず、総務兼務で運営する企業内図書スペース(→ 企業内図書スペース向けテンプレート を参照)
マニュアルの使い方
本マニュアルは骨子テンプレートです。本文中に次の 2 種類のマーカーを設けています。貴館の実情に合わせて書き換え・追記のうえご利用いただくと、マニュアル整備が短時間で完了します。
- 記入欄(例): 典型的な運用事例を記載しています。貴館の実際の運用に合わせて、事例文をそのまま書き換えてください。
- 【テンプレート編集メモ】(引用ブロック内): 画面キャプチャ等を挿入する場所の指示です。完成版マニュアルではこの行ごと削除してください。
1. 運営の目的と基本方針
- 設置目的と社会的責任: 組織の事業遂行に必要な資料を収集・保管・周知し、利用者が自ら調べ、考えるためのアクセスを支援する「知の拠点」としての役割を担います。
- 選書基準(資料構成方針): 組織の目標や利用者のニーズに整合した収集方針を策定します。具体的には、収集対象とする専門分野、新刊優先か基礎資料重視か、学術性か実務性かといった優先順位を明確にします。
- 中立性と公平性: 特定の思想や立場に偏らず、多様な対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を公平に収集する責任があります。
- 読書の秘密の保持: 利用者が「何を検索したか」「何を借りたか」という情報は、個人のプライバシーとして厳重に守られなければなりません。
記入欄(例):
- 設置母体: 〇〇株式会社 経営企画部
- 利用対象者: 自社社員、グループ会社社員、契約研究員(一般利用者の取扱いは 5.4 を参照)
- 収集分野の優先順位:
- 事業領域に直結する専門書・学術書(最優先)
- 業界誌・市場動向資料・公的統計
- 経営・マネジメント関連書
- 一般教養書(最低限)
- 改訂版受入時の旧版扱い: 原則除籍(特に法令・基準書類)
2. 資料の組織化(受入・登録・分類)
2.1 受入処理
通常図書の受入は、以下のワークフローで行います。受入情報の登録は書誌レコードに紐付ける必要があるため、データ登録の後 に行うのが正しい順序です。
- 発注済資料の納品書を確認する
- 現物と納品書を照合し、汚損・乱丁の有無を確認する
- 本にバーコードを貼付する(貼付位置・統一ルールは「3. 装備」を参照)
- データ登録(書誌情報の登録)
- ISBN バーコードを読み取り、書誌情報を自動取得する
- NDL サーチや書誌ユーティリティから書誌データを取得し、不足項目は手入力で補完する
- 分類記号・件名を付与する(詳細は 2.2・2.3 を参照)
- 受入情報の登録: 登録済の書誌レコードに、受入日・受入区分(購入・寄贈・交換)・受入価格を紐付けて記録する
- 入力情報の確認: チェックリストまたは WebOPAC 画面で、書誌情報・受入情報が正しく登録されていることを確認する
【テンプレート編集メモ】 画面キャプチャ挿入箇所 — データ登録画面・受入情報入力画面・WebOPAC 確認画面のスクリーンショットを挿入してください。完成版では本行を削除します。
記入欄(例) 受入区分の定義と運用:
- 購入: 通常発注(経理伝票添付、会計年度内消化)
- 寄贈: 受贈者名・寄贈日を記録、御礼状を送付
- 交換: 学術機関・関連企業との交換刊行物(無償)
- 移管: 社内他部門から移管された資料(移管伝票記録、受入価格はゼロ円計上)
2.2 分類法の採用
日本十進分類法(NDC)を基本に、専門分野の特性に合わせてアレンジした独自分類や、分野に特化した分類法(看護分野の N 分類など)を採用し、同一主題の資料が書架に集まるようにします。
記入欄(例):
- 採用分類: NDC9(日本十進分類法 第 9 版)
- 独自分類: 社内資料は「S-XXX」(部門別 3 桁+連番)。例: S-100(経営企画)、S-200(研究開発)
- 著者記号: 日本著者記号表(もりきよし編)
- 別置: 大型本(A4 以上)は「L」、参考図書は「R」、社史は「Co」のプレフィックス
2.2.1 書誌データ入力ルール
書誌レコードの表記揺れを防ぐため、入力ルールを定めて運用します。担当者が交代しても同じ品質で検索できるよう、判断に迷う項目はあらかじめ方針を決めておきます。
- 出版年: 「初版発行年」を採用するか「最新刷の年」を採用するかを統一する(一般的には初版発行年を採用し、増刷だけの場合は更新しない)
- 版表示: 改訂版・新版・増補版等は版次を必ず記録する。同一タイトルでも内容変更があれば別書誌として扱う
- ページ数: 内容の充実度を示す指標として記録する。
記入欄(例):
- 出版年の方針: 初版発行年を採用(増刷の場合は更新しない、ただし改訂版は新規書誌として登録)
- 版表示: 「第◯版」「改訂◯版」「新版」を奥付通りに記録
- ページ数・大きさ: 必須項目として登録
2.3 件名(キーワード)の付与
タイトルだけでは判別できない資料の主題を簡潔な言葉(件名)として登録し、検索精度を高めます。
2.4 雑誌・継続購読資料の管理
- 継続購読タイトル一覧を維持する
- 月次で未着号を確認する
- 未着が続く場合は版元・取次へ照会する
- 9 月に次年度の契約更新可否を判断(利用統計・予算枠を踏まえて確定する)
- 製本対象号の確定・製本業者への発注を年次で行う
- 製本しない雑誌は、タイトルごとに定めた保存年限に従って除籍する
記入欄(例) 継続購読タイトル(一部抜粋):
| タイトル | 刊行頻度 | 版元 | 取次 | 連絡先 | 保存年限 | 製本 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 〇〇ジャーナル | 月刊 | 株式会社 □□ | 直販 | 03-xxxx-xxxx | 永久 | 製本 |
| △△レビュー | 季刊 | 一般社団法人 ×× | 紀伊國屋書店 | xxxx@xxx.jp | 10 年 | 製本 |
| 業界週報 | 週刊 | 〇〇新聞社 | 直販 | 03-xxxx-xxxx | 1 年 | 製本せず |
| 一般雑誌 | 月刊 | △△社 | 取次 | — | 6 か月 | 製本せず |
契約更新スケジュール:
- 9 月: 次年度契約タイトルの利用統計を集計、継続/中止/追加を選定
- 10 月: 取次・版元へ次年度契約意向を通知
- 1〜2 月: 次年度発注・支払処理
製本ルール: 年 1 巻 6 冊以上のタイトルは年次製本。製本指示書はカウンター下引出「製本指示書フォルダ」に保管。
3. 装備(資料の物理的加工)
- 蔵書印: 組織の所有物であることを示すため、本の上部(天)や標題紙など、所定の位置に押印します。
- バーコードの貼付: 貸出・返却や棚卸しを効率化するため、一冊ごとに固有の番号を割り振ったバーコードを貼ります。貼付位置は「背表紙を左にした状態で、右側と下側を 2 cm 空ける」など、統一ルールを設けます。
- 背ラベル(三段ラベル): 1 段目に分類記号、2 段目に著者記号、3 段目に巻次等を記入し、書架の正しい位置(住所)を明示します。
- カバー・帯の処理: 装備時のカバー・帯の取扱いを統一します。専門図書館ではカバー・帯は廃棄する運用が一般的です。理由は次の通り。
- 保護と修理: 利用頻度の高い資料にはブックコートフィルムを貼り、汚損を防ぎます。ページの破れには専用の補修テープを使用し、セロハンテープの使用は劣化の原因となるため厳禁です。
記入欄(例):
- カバー・帯の扱い: 受入時に廃棄(例外: 軽装本のみ本体にブックコートフィルム包装)
- 蔵書印: 標題紙右下+小口下部の 2 か所、社章印 1.5 cm 角・黒インク
- バーコードラベル: 24 × 12 mm、裏表紙右下、右辺・下辺から 2 cm 空ける
- 背ラベル: 三段ラベル 10 × 30 mm、背下端から 2 cm 上に貼付
- ブックコート対象: 装丁が脆弱な本、利用頻度の高い参考図書、表紙が紙のみの軽装本
- 別置プレート: 開架/閉架書庫/重点資料/参考図書 を色分けシールで識別
4. サービス(貸出・返却・電子資料)
4.1 貸出
- 貸出 メニューを開く
- 利用者カードを読み取る
- 貸出図書のバーコードを順に読み取る
- 貸出冊数・返却期限を確認し、利用者に伝える
- 貸出完了 を押下する
貸出ルール: 対象者、冊数制限、貸出期間(通常 1〜4 週間)を明確に定め、掲示等で周知します。
記入欄(例) 利用者区分ごとの貸出ルール:
| 利用者区分 | 冊数上限 | 貸出期間 | 予約可否 | 延長 |
|---|---|---|---|---|
| 役員・正社員 | 10 冊 | 4 週間 | 可 | 1 回まで |
| 契約研究員 | 5 冊 | 4 週間 | 可 | 1 回まで |
| 派遣・パート | 3 冊 | 2 週間 | 可 | 不可 |
| 一般利用者 | 0 冊(館内閲覧のみ) | — | 不可 | — |
禁帯出資料: 参考図書(R 別置)、社史、最新号雑誌、特殊装丁本。
4.2 返却
- 返却 メニューを開く
- 返却図書のバーコードを読み取る
- 予約あり と表示された場合は、取り置き棚へ移動し、予約者へ連絡する
スタッフ不在時の返却受け取り: 専門図書館では、利用者が開館中でもカウンターにスタッフが不在となる場面(席を外す・他業務対応中)が発生します。また、組織によっては時間外でも利用者が出入りできる運用形態もあります。これらに対応するため、館内に以下のいずれかを設置します。
- 返却ポスト(ブックポスト): 投函口付きの専用ボックス。資料が外から見えず、誤って持ち出される懸念が少ない。
- 返却棚(返却ワゴン・返却カート): カウンター付近に「返却された本」と明示した棚やワゴンを設置し、利用者が直接置いていく方式。スペース効率がよく、汚損・破損の目視確認も容易。
いずれの場合も、館外への設置は想定せず、館内(カウンター付近) に配置することを基本とします。
回収・処理の規定:
- 毎朝の開館前 に必ず回収し、当日中にシステム上で返却処理を完了させる
- 回収時、汚損・破損・水濡れ・付箋の貼付等を目視確認し、必要に応じて補修・利用者照会を行う
- 予約のある資料は返却処理後、速やかに取り置き棚へ移動し、予約者へ連絡する
- 回収担当は当日の開館担当者を原則とし、シフト表で明示する
記入欄(例):
- 採用方式: 返却棚(カウンター右脇の専用ワゴン)
- 設置場所: メインカウンター横、利用者動線上
- 回収時刻: 毎朝 9:00(開館 9:30 の 30 分前)
- 回収担当: 当日の開館担当者(シフト表「カウンター当番」に明記)
- 長期休館明け対応: 連休明け初日は午前中いっぱい返却処理に充て、貸出受付は午後から開始
4.3 予約管理
予約は 貸出中(他利用者が借りている)資料に対してのみ 受け付けます。在架資料(図書室の書架にある本)は予約対象外 とし、利用者は来館して直接貸出手続きを行います。在架本に対する予約申込があった場合は、その旨を案内し、自ら来館いただくよう促してください。
- 利用者からの予約申込(窓口・OPAC 経由)を 予約登録 メニューで登録します
- 取り置き期限内に来館いただけるよう連絡し、期限超過した場合は次順位の予約者へ繰り上げます
記入欄(例):
- 予約受付対象: 貸出中資料のみ(在架資料は予約不可、来館・直接貸出を案内)
- 予約連絡手段: 第一連絡は E メール(社内アドレス)。3 営業日応答なしの場合は内線電話
- 取り置き期限: 連絡日から 7 営業日
- 期限超過時: 予約を自動解除し、次順位者へ繰り上げ通知
- 取り置き棚場所: カウンター内、利用者氏名のあいうえお順
4.4 延滞・督促
- 期限を過ぎた利用者には、メール等でやんわりと返却を促します。
- 督促段階(1 次督促/2 次督促/最終督促)と各段階での文面・連絡方法を定めておきます。
記入欄(例) 督促段階別の連絡:
| 段階 | タイミング | 連絡方法 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 1 次督促 | 期限超過 3 日後 | システム自動メール「ご返却期限のお知らせ」 | 自動 |
| 2 次督促 | 期限超過 14 日後 | スタッフから個別メール+内線電話 | カウンター担当 |
| 最終督促 | 期限超過 30 日後 | 本人 + 所属長宛メール、館長承認のうえ | 館長 |
文面ひな型: 社内共有フォルダ Library/督促文面/ に格納。
4.5 電子資料の管理
電子ジャーナルやデータベースは、利用条件(ID/PW 認証や IP アドレス認証)や契約期間、バックナンバーの利用範囲を把握し、利用状況を定期的に確認します。
- 契約タイトル・契約期間・契約金額の一覧を維持する
- 月次でアクセス統計を取得する
- 契約更新可否の判断材料として利用統計を活用する
記入欄(例) 契約電子資料一覧:
| 名称 | 認証方式 | 契約期間 | 年額 | ベンダー連絡先 |
|---|---|---|---|---|
| 〇〇 DB | IP 認証(社内全レンジ) | 2026/04〜2027/03 | □□ 万円 | 〇〇出版 03-xxxx-xxxx |
| △△ Online | SAML(Shibboleth) | 2026/04〜2027/03 | □□ 万円 | △△社 support@xxx |
| □□ e-Journal | ID/PW(共有 ID) | 2026/01〜2026/12 | □□ 万円 | 取次経由 |
ID/PW 共有 DB: パスワードは四半期に 1 回更新、最新パスワードは「社内共有フォルダ Library/DB_Pass」に格納。
5. 利用者管理
5.1 利用者登録
- 利用者登録 メニューを開く
- 氏名・所属・連絡先を入力する
- 利用者区分(職員・研究員・学生・外部利用者等)を選択する
- 貸出冊数上限・貸出期間を区分に応じて設定する
- 利用者カードを発行する
5.2 利用者情報の更新・抹消
- 異動・退職等で所属が変わった場合は速やかに利用者情報を更新する
- 抹消時は未返却資料の確認を行ってから処理する
記入欄(例):
- 異動情報の取得元: 人事システムからの月次連携(毎月 1 日)
- 抹消手順: 未返却確認 → 督促 → 完了後に利用者ステータスを「無効」に変更(即時削除はしない、 5.3 参照)
- 即時除籍の判断基準: 高額資料(取得価額 〇〇円以上)は退職・抹消時点で除籍・備品台帳更新
- 督促完了後も未返却の資料: 紛失として除籍処理(8.2 参照)
5.3 個人情報・読書の秘密の取扱い
専門図書館では、研究の継続性・トレーサビリティ確保のため、貸出履歴を長期保管する運用が一般的 です。利用者の異動・退職後も、貸出履歴自体は蔵書評価・利用統計の根拠資料として保管します。一方で、読書の秘密は厳格に保護する必要があり、アクセス権限の制限と目的外利用の禁止を徹底します。
- 貸出履歴は研究支援・蔵書評価・利用統計の目的で長期保管する
- 履歴データへのアクセス権限を必要最小限のスタッフに限定する
- 個人情報保護方針に基づき、目的外利用・第三者提供を行わない
- 利用者本人または親組織からの正当な開示請求以外、貸出履歴は外部へ開示しない
- 開示請求があった場合は館長承認のうえ、記録を残して対応する
記入欄(例):
- 貸出履歴の保管期間: 永久保管(研究のトレーサビリティ確保のため)
- 利用者基本情報の保管: 退職者は「無効」ステータスで保管継続(即時抹消はしない)
- アクセス可能なスタッフ: 図書館担当 3 名(個別アクセスログ取得)
- 個人情報保護方針: 親組織「〇〇株式会社 個人情報保護方針」に準拠
- 開示請求対応窓口: 館長(不在時は副館長)
5.4 一般利用者(外部利用者)の受入規定
組織の方針に応じて、職員以外の一般利用者(学外研究者、関連企業職員、地域住民、紹介者等)の受入可否を明確に規定します。本テンプレートでは**「館内閲覧のみ可」**を標準パターンとして記載します。他方針を採用する場合は、本節を「完全閉架(職員専用)/限定的貸出可/広く開放」のいずれかに置き換えてください。
受入時の運用項目(館内閲覧のみ可の場合):
- 事前申込制/当日来館可 のいずれかを明示
- 受付時に身分証(運転免許証・社員証等)を提示してもらう
- 利用目的・所属を確認・記録する
- 利用範囲(閲覧のみ/複写可)を明確に伝える
- 利用カードを発行する場合は有効期限・更新ルールを定める
- 機密資料・社内資料の閲覧制限を明示する
記入欄(例):
- 一般利用者受入方針: 館内閲覧のみ可(事前 E メール申込制)
- 申込先: library@example.co.jp / 受付時間: 平日 10:00〜16:00(土日祝・年末年始休館)
- 必要書類: 身分証明書(写真付き)、紹介状(学外研究者の場合)
- 利用範囲: 開架資料の館内閲覧、コピー機の利用(著作権法第 31 条の制限内)
- 制限事項: 貸出不可、書庫立入不可、社内資料(S 分類)閲覧不可、PC・データベース利用は不可
- 利用カード: 単回利用は当日のみ有効。継続利用希望者は年間カード(有効期限 1 年、無料)を発行
- 紹介者方針: 自社社員の紹介を要件とし、紹介者氏名を記録
6. 文献複写
自館未所蔵資料の入手は、商用文献複写サービスへの依頼を標準パターンとして記載します。NACSIS-CAT/NACSIS-ILL 加盟館(大学・研究機関等の図書館に多い)は、本節を相互貸借(ILL)中心の運用に置き換えてご利用ください。
6.1 利用者からの依頼受付
- 複写依頼 メニューまたは所定の様式で依頼を受け付ける
- 利用者から書誌情報(タイトル、著者、雑誌名、巻号、ページ範囲、入手希望期日)を聴取
- 自館所蔵を確認し、所蔵があれば自館で対応する
- 自館に無い場合は所蔵館・提供元を特定する(CiNii Books / NDL サーチ / Google Scholar 等)
- 入手予定日・概算費用を利用者へ案内する
6.2 商用文献複写サービスへの依頼
商用の文献複写サービスは、加盟手続き不要で、専門資料や海外文献にも幅広く対応できる利点があります(料金は加盟館間 ILL より高め)。
主要な依頼先:
- 国立国会図書館 遠隔複写サービス: 和洋雑誌・図書・新聞・博士論文等を広く対応。法人後払い契約可
- 株式会社サンメディア(Sunmedia): 国内外の文献複写代行、月次法人請求
- 紀伊國屋書店 Article Express: 海外学術文献中心、電子配信対応
- ジー・サーチ(G-Search): ビジネス系・新聞記事系の複写
- 専門出版社・学協会の直接複写サービス: 業界誌・学会誌等
依頼の流れ:
- 業者ごとの料金体系・対応範囲・納期を把握しておく
- 依頼ごとに業者を選定する(料金・納期・対応分野で比較)
- 業者の申込フォーム(Web/FAX/メール)から発注する
- 著作権法第 31 条の私的複製範囲を超える場合は版元許諾の要否を業者に確認する
- 到着後、利用者へ料金実費+手数料を案内し受取連絡を行う
- 経理処理(前払いカード/法人請求書/立替精算 等)を行う
記入欄(例):
- 加盟状況: NACSIS-CAT 非加盟(自館は他館への複写提供を行わない)
- 主要依頼先と契約形態:
| 業者 | 対応範囲 | 料金 | 契約形態 |
|---|---|---|---|
| 国立国会図書館 遠隔複写 | 国内雑誌・図書全般 | 1 枚 25.3 円+送料 | 法人後払い契約 |
| 株式会社サンメディア | 国内外学術文献 | 1 件 1,500 円〜 | 月次法人請求 |
| 紀伊國屋 Article Express | 海外学術文献 | 1 件 USD 30〜 | 部門経費で都度精算 |
| 〇〇学会 文献複写 | 学会誌 | 1 件 1,000 円 | 会員特典・前払い |
- 業者選定基準:
- 国内雑誌・低コスト → NDL 遠隔複写
- 海外文献・速達性 → サンメディア/紀伊國屋
- 学会誌 → 該当学会の文献複写を優先
- 利用者への案内: 料金は実費請求(部門経費精算 or 利用者所属部門への振替)、納期は 1〜2 週間程度
- 月次集計: 業者別の依頼件数・料金合計を月次レポートに記載
- 経理処理: 法人後払い契約は月次でまとめて経理伝票処理、都度払いは伝票を都度発行
7. 利用者教育
- 利用頻度の高い商用データベースについて、定期的に講習会を開催します
- 利用者からの個別相談(パスファインダー作成等)にも対応します
記入欄(例):
- 商用 DB 講習を四半期に 1 回(参加任意、各回 1 時間)
- 研究支援セミナーを年 2 回(事業部協賛)
- 新人研究員向け文献検索講習を毎年 4 月に開催
8. 蔵書点検とメンテナンス
8.1 蔵書点検(棚卸し)
書架の資料とシステム上のデータを照合し、紛失・誤配架・汚破損の状況を確認します。
8.1.1 事前準備(実施 1 か月前まで)
- 閉館アナウンス: 社内ポータル・館内掲示・利用者メールで閉館期間を周知する
- ハンディターミナルの機器手配: 自館手配または貸出業者から手配(必要台数を見積)
- 他部署職員への応援依頼: 読み取り作業の人員を確保(事前にシフト調整・所属部署長の承認取得)
- 棚割り図と担当割当表の作成: 棚単位で担当者を割り振る
- 作業手順書の準備: 当日朝の説明資料を用意
8.1.2 実施手順(3 日間で閉館実施)
- 棚ごとに区画を割り当て、ハンディターミナルで全冊を読み取る
- 配架場所が違う本(誤配架)はその場で正しい位置へ移動 する
- 読み取り完了後、システムと照合して不一致リストを出力する
- 不一致資料の調査:
- 書庫・閉架・カウンター内・整備中棚・修理棚を順に確認
- 出納記録・貸出履歴を確認
- 当日中に見つからない資料は 「不明」ステータス に変更して登録
- 3 日目終了時に点検結果サマリを作成
8.1.3 不明資料の扱い
- 不明発見後も「不明」ステータスのまま 継続保管 する(即時除籍はしない)
- 開館後も継続して捜索し、発見した場合はステータスを通常へ戻す
- 2 年間「不明」のままの資料は除籍処理 を行う(除籍理由を「不明」と記録)
8.2 除籍・廃棄
- スペースの確保と情報の鮮度維持のため、「改訂版の受入」「刊行から一定年数経過」「内容の陳腐化」などの廃棄基準に基づき、定期的に資料を処分します。
- 雑誌は保存年限を超えたバックナンバー(製本対象外)を計画的に除籍します。
- 蔵書点検で 2 年連続「不明」となった資料も除籍対象とします。
- 除籍処理時は理由を必ず記録し、現物は組織のルールに従って廃棄・寄贈・売却します。
資産管理・監査対応:
- 除籍処理時は除籍理由・除籍日・最終利用者(貸出中の場合)・取得価額をシステム上に記録として残す
- 資産計上している資料は、除籍と同時に備品台帳の更新を行う
- 除籍記録は親組織の証憑保管期間(通常 7 年)に従って保存し、監査時の照会に応じる
8.3 書架整理
資料が分類順に正しく並んでいるか日常的に確認(シェルフ・リーディング)し、利用者が探しやすく整えます。
8.4 資料の修理・応急処置
ページの破れ
- 専用の補修テープ を使用する(セロハンテープは経年で黄変・粘着剤劣化を起こすため厳禁)
- 破れの方向に沿って、表裏両面に貼る
- 重度の破損は専門業者へ修理依頼を検討する
水濡れ資料の応急処置
- ページの間に吸水紙(キッチンペーパー・新聞紙等)を 5〜10 ページおきに挟む
- 平らな場所に立てて、または平積みにして上から重石を載せる
- 吸水紙が湿ってきたら定期的に交換する
- 完全に乾燥するまで配架しない(カビ発生防止)
- 重度の水損は冷凍保管後に専門業者の真空凍結乾燥を検討する
汚損・カビ
- 軽微な汚れは消しゴム・乾いた布で除去する
- カビは他資料への伝染防止のため隔離し、専門業者の処置を仰ぐ
記入欄(例) 資料の修理:
- 補修備品保管: バックヤード書棚 B-3 段(補修テープ/吸水紙/ブックコート/吸取紙)
- 専門業者: 〇〇製本(03-xxxx-xxxx)、修理依頼フロー = 見積依頼 → 稟議 → 発注
- 修理判断:
- 表紙のみ破損 → 自館補修
- 本文ページ脱落・水損 → 業者依頼
- 全体的な劣化 → 除籍または復刻版購入を検討
記入欄(例) 蔵書点検運用:
- 実施時期: 毎年 8 月のお盆期間中(3 日間、閉館して集中実施)
- 閉館アナウンス: 実施 1 か月前に社内ポータル・館内掲示・メールで周知(休館期間・代替案内を明示)
- 機器手配: ハンディターミナル 5 台(IT 部門経由でレンタル、実施 2 週間前までに納品)
- 応援人員: 他部署職員 3 名(事前にシフト調整、当日朝に作業説明)
- 担当割当: 開架は応援職員、閉架書庫・社内資料は図書館スタッフが担当
- 不明資料の扱い: 「不明」ステータスのまま保管、2 年経過後に除籍
記入欄(例) 除籍運用:
- 除籍基準:
- 改訂版受入後の旧版(法令・基準書類は即除籍)
- 刊行 30 年以上経過、かつ過去 10 年無貸出
- 内容陳腐化が著しいもの(館長判断)
- 雑誌は保存年限を超えたバックナンバー(製本対象外)
- 蔵書点検で 2 年連続「不明」となった資料
- 除籍承認: 館長承認、年次の除籍リストを親組織へ報告
- 除籍処分: 廃棄/寄贈/売却を選択(組織方針に従う)
- 書架整理ローテーション:
- 開架は週 1 回シェルフ・リーディング(金曜閉館後)
- 閉架書庫は四半期に 1 回
9. リスクマネジメント
情報セキュリティ・防災・防犯・BCP の全般方針は親組織の規程に従うものとし、本マニュアルでは図書館固有の運用のみを定めます。
9.1 著作権の遵守
館内コピーサービス・複写依頼の処理では、著作権法(第 31 条)に基づき「調査研究目的」「著作物の一部分(おおむね半分まで)」「一人につき一部」の制限を守ります。複写可能範囲の詳細は 6. 文献複写 の運用に準じます。
9.2 システム障害時のフォールバック運用
クラウドシステムが一時的に利用できない場合に備え、紙の貸出簿(利用者氏名・図書バーコード番号・貸出日・返却予定日を記録する様式)を準備しておきます。復旧後にスタッフが貸出簿の内容をシステムへ一括登録します。
記入欄(例):
- 紙ベース貸出簿: 様式「F-001 緊急貸出簿」をカウンター下引出に常備(30 部)
- 緊急連絡網(障害発生時): 館長 → 親組織 IT 部門 → システムベンダー
- システムベンダー連絡先: 株式会社 LX システム(03-xxxx-xxxx)
- 親組織規程の参照先: 情報セキュリティ規程・BCP・防災計画は
共有フォルダ/規程/を参照
10. 統計・報告
10.1 取得すべき統計
- 貸出・返却件数(日次・月次・年次)
- 利用者数(登録者数・実利用者数)
- 蔵書冊数(受入・除籍・現在高)
- ILL 件数(依頼/受付、複写/現物別)
- 電子資料アクセス統計
10.2 報告
- 月次・年次で関係部署(総務・経営層・親委員会等)へ利用統計を報告します
- 統計は次年度予算要求・契約更新判断の根拠資料として活用します
記入欄(例):
- 報告先と頻度:
- 総務部: 月次(翌月 5 営業日以内)
- 経営層: 四半期(四半期末翌月)
- 親委員会(図書委員会): 年次(年度末翌月)
- 報告様式:
- 月次 = Excel テンプレ「月次利用報告」(社内共有フォルダ
Library/Report/) - 年次 = PDF「年次活動報告書」(前年比・予算実績含む)
- 月次 = Excel テンプレ「月次利用報告」(社内共有フォルダ
- 提出期限:
- 月次は翌月 5 営業日
- 年次は決算スケジュールに合わせ 4 月末
11. 業務記録と引き継ぎ
11.1 日々の記録
業務内容、利用状況、特記事項などを、カレンダーや日誌形式で残します。
11.2 引き継ぎ資料
担当者の交代時に混乱が生じないよう、以下をまとめた資料を作成します。
- 年間業務スケジュール
- 社内のキーパーソン情報(連絡先・関係性)
- 取引業者・ベンダー一覧(連絡先・契約内容)
- 独自の慣習(掃除・備品管理・鍵管理等)
- パスワード・アカウント管理ルール(安全な引き継ぎ手順)
記入欄(例):
- 引き継ぎ資料保管: 社内共有フォルダ
Library/引継書/(アクセス権: 図書館スタッフ+総務部長) - 更新頻度: 年 1 回(4 月)。組織変更・大型契約変更時は随時
- キーパーソン:
- 総務部 〇〇(予算・契約承認)
- 経理部 □□(伝票処理)
- IT 部門 △△(システムベンダー窓口)
- 法務部 ××(著作権・契約相談)
- パスワード管理: 暗号化ファイルで保管。鍵パスワードは館長と副館長の 2 名で分割保管
12. 日常業務・定期業務チェックリスト
日次(開館前)
- システム稼働確認
- バーコードリーダー・プリンター動作確認
- 返却ポスト/返却棚の中身処理(午前中に)
- 予約取り置き棚の整理
日次(閉館後)
- 当日の貸出・返却・予約件数を集計
- 未返却資料の督促リストを確認
- 戸締り・施錠
週次
- 督促状の発送(メールまたは郵送)
- 雑誌未着号の確認
- 新着図書のお知らせ更新
- 書架整理(シェルフ・リーディング)
月次
- 蔵書受入・除籍の集計
- 利用統計の作成・関係部署への報告
- 雑誌チェックインリストの更新
- 電子資料アクセス統計の取得
- ILL 件数の集計
年次
- 蔵書点検(3 日間閉館、ハンディターミナル+他部署応援)
- 不明資料の状況確認(2 年連続不明は除籍)
- 利用者情報の棚卸し(在籍状況確認、退職者ステータス更新)
- 年間統計の作成・年次報告書の提出
- 雑誌製本発注
- 製本対象外雑誌の保存年限チェック・除籍
- 9 月: 次年度の電子資料・雑誌契約更新可否を判断
- 次年度予算要求
- BCP 文書・避難経路図の見直し
- 引き継ぎ資料の更新
記入欄(例) 貴館固有の定期業務:
- 社史・古文書管理: 年 1 回(10 月)防湿剤交換、5 年に 1 回専門業者による状態調査
- 外部システム連携: NDL Search との書誌連携を年次見直し
- 研究支援: 新人研究員向け文献検索講習を毎年 4 月に開催
- 防災備品: 消火器点検(半年に 1 回)、転倒防止器具点検(年 1 回)
図書室の仕事は、資料と利用者をつなぐこと。
LXは、その役割を無理なく続けるための「道具」です。
いまの運営に、どんな支えが必要か、一緒に考えてみませんか。