私たちは、毎日の生活の中で、本や雑誌で小説を読んだり、CDの音楽を聴いたり、絵画や彫刻のような美術を鑑賞したり、テレビでドラマやアニメを楽しんだりしています。
小説、音楽、美術、アニメなどの作品は、それを作った人がそれぞれ自分の考えや気持ちを作品として表現したものです。そして、この表現されたものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、法律によって著作者に与えられる権利を「著作権」と言います。

著作権については特段の届出や登録は必要ありません。だれでもが創作活動を行えば直ちに発生します。

著作権制度は、このような著作物を生み出す著作者の努力や苦労に報いることによって、日本の文化全体が発展できるように、著作物の正しい利用をうながし、著作権を保護することを目的としています。

本の貸し出しと著作権

図書館を訪れた際、当たり前のようにお金を払わずに本を借りる事が可能ですよね。
でも「著作物」である本を無料で貸している図書館って大丈夫なの?自分も借りてしまって権利の侵害にならないの?よく考えると疑問がありますね。
「著作権」の中でも図書館に深い関係がある権利として「貸与権」があります。
改めて「貸与」の意味を確認すると「返却を条件に金品の使用を許す」です。
「著作権法」の1つに貸与権が定められています。

(貸与権)
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048_20220617_504AC0000000068#Mp-At_26_3

図書館での貸出サービスはまさにこの「公衆に提供する」に該当します。
この「貸与により公衆に提供する」権利は著作権者だけに認められているのでこの条文だけ読むと著作権者ではない図書館は貸出サービスを行うことができません。

しかし、この貸与権にはその権利に及ばない範囲があります。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048_20220617_504AC0000000068#Mp-At_38

現在、図書館が行っている貸出サービスはこの条文に基づいて行われています。

この条文のなかでは「図書館」という文字は出てきません。
現在図書館で行っている貸出サービスは「図書館」だからできるのではなく、「営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合」だからできるのです。
図書館という枠組みにとらわれずに、貸出サービスを考えましょう。

著作者以外の人でも著作物の利用が認められる場合

著作権が作られた目的は、著作者の権利を守るとともに文化の発達を促す制度です。
このため、著作権は一定の範囲で制限され、著作者以外の人でも著作物の利用が認められる場合があります。

著作物が自由に使える場合 | 文化庁

著作権法の改正

毎日めまぐるしく世の中が進化しているなかで法律も時代に合わせて変えていかなければなりません。

2018年に行われた通常の著作権法改正とTPPによる改正で2回、2020年に1回、2021年に1回と合計4回の改正が行われています。
改正の中で、図書館関係の権利制定の見直しも行われました。
主に変わった点を紹介します。

保護期間の延長(TPP11協定の発効に伴う改正 2018年12月30日施行)

著作権及び、著作隣接権の存続期間が50年~70年に延長されました。
これまでは、映画著作のみ例外的に70年でしたが、一律70年となりました。
なお、改正前に50年経過して一度切れた保護期間は復活しません。

権利侵害罪の一部非親告罪化(TPP11協定の発効に伴う改正 2018年12月30日施行)

これまで著作権は、権利者以外の者が権利侵害を訴えられませんでした。
しかし、以下の条件を全て満たせば権利者の告訴がなくても訴訟できるようになりました。

  • 対価を得る目的又は権利者の利益を害する目的があること
  • 有償著作物について原作のまま譲渡、公衆送信又は複製を行うものであること
  • 郵送著作物等の提供・提示により得ることが見込まれる著作者の利益が不当に害されること

平たく言えば、原本をそのまま販売、公開する海抜番行為は権利者の意思関係なく著作隣接権利者が訴えられることになります。

アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条等関係 2018年12月30日施行)

これまでアーカイブ、すなわち図書館や美術館が収集、保存している著作物の活用利用を活用化していく際に、著作権が足かせになっていた部分が大きくありました。
国立国会図書館では、改正前まですでに廃盤となった著作物等は国内の公共図書館にデータ送信できたが、改正により海外の図書館にも送信できるようになりました。

国立国会図書館による絶版等資料の個人向けのインターネット送信(第31条第4項第2条改正後:第31条第8項等関係 2022年1月1日執行)

絶版資料等の入手困難な資料は2018年の改定で国立国会図書館のデータ送信が海外の図書館まで拡大されました。
しかし、データ送信が可能なのは「国立国会図書館から所定の図書館」だけで、利用者が閲覧するには図書館まで行く必要がありました。

一方、新型コロナウイルス等の影響もあり図書館が休館したため本が借りられなくなり、ネットを通じた図書へのアクセスに対するニーズが明らかになりました。
また、コロナとは関係なく図書館が周りに無い地域利便性の声や、障害等で図書館に行くのが困難な人のためネットでアクセス出来るようにする必要が認識されるようになりました。

2022年の改正で更に送信相手が図書館に限らず、利用者に対して直接送信できるようになりました。

社会教育法と図書館法

日本には様々な法律がありますね。図書館にも、「図書館法」という法律があります。

図書館法は、「社会教育法」「博物館法」と合わせて「社会教育三法」と呼ばれています。図書館法の大元となっている「社会教育法」について少し勉強しましょう。

普通、法律というものは人々を拘束するために行うものが一般的ですよね。
○○をしてはいけないとか、○○するように務めなければならないとか。
個人の行動を制限するように決まっているのが法律です。

ただ、社会教育法は少し変わっていて、基本的には自由でありなさいという考え方が根幹にあり、人々に制限されるものではなくて、人々の自由を守るために作った法律となっています。
どういうことかというと、「社会教育をやりたい」人々が制限される、させられるようなことがあってはならないということです。
そんな社会教育法の精神に基づき、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図りもって国民の教育と文化の発展に寄与することを目的に作られたのが1950年に執行された「図書館法」です。

図書館とは

この法律において図書館とは

を指しています。

複写サービスと著作権

「複製権」とは著作権に含まれる権利の一つです。著作権法第21条で規定されています。(著作権法第21条 「著作権は、その著作物を複製する権利を占有する」)
複製とは、作品を印刷・撮影・録画・録音・模写(書き写し)したりすること、そしてスキャナーなどにより電子的に読み取ること、また保管することなどを言います。

今の時代、簡単に作品を複製することができますが、誰もが無断で複製を繰り返していると作品を生み出している著作権者の売上が減り収入がなくなってしまいます。それを防ぐための管理が「複製権」です。

通常、本や雑誌などに掲載されている作家の作品は、著作者である作家自身が「複製権」と複製品を販売する権利である「譲渡権」を出版社に委託されます。そして出版社から報酬を受け取ります。

このように複製権は著作者が次を作り出すための収入を保護しています。複製権の役割は、著作者が出版社などに「複製することを認める」権利なのです。

本のコピー

本来、著作物の著作権は、「著作者」にあるため、複製したい場合は著作者に「許可」を取らなければなりません。
ただし、著作権法が定める条件を全て満たす場合は著作権者の許可なしに複写できます。
著作権法第31条第1項第1号は、著作権者の許諾なく、図書館が所蔵資料を複写できる主な条件として以下を定めています。

  • 複写の目的が「調査研究」であること
  • 複写箇所が「著作物の一部分」であること
  • 複写物の提供は「一人につき一部」であること

複写可能な範囲

単行本

著作物全体の半分まで。

短編集・論文集・分担執筆など

それぞれの作品・論文・執筆箇所の半分まで。

博士論文

1冊が1つの論文で構成されている場合には半分まで。
なお、複数冊で構成されている場合には、それぞれの冊子の半分まで。

規格

国内・海外にかかわらず、国が制定した規格本文は全部複写可。それ以外の規格の本文は半分まで。
日本規格協会作成の翻訳文、解説等はそれぞれの半分まで。

地図

1枚ものの地図の場合は、その1枚の半分まで。
地図帳の場合、1つの地図の半分まで(1ページ以下の地図は複写不可)。
ただし、国土地理院が作成した地図(CD-ROMを除く。)は、調査研究目的であれば、全部複写可。

写真

個々の写真の半分まで(1ページ以下の写真は複写不可)。
ただし、その写真が昭和32年以前発行の場合には、全部複写可。

絵画

個々の絵画の半分まで(1ページ以下の絵画は複写不可)。

楽譜

個々の楽譜の半分まで(1ページ以下の楽譜は複写不可)。

複写サービス

「複写サービス」という、著作物をコピーすることに関し、著作権者が持っている複写権の管理の委託を受け権利者に代わって委託を受けた範囲でコピーすることを利用者に承諾するサービスがあります。

公益社団法人日本複製権センター

出版社著作権管理機構

メディックス・ジャパン株式会社

著作者の権利を守り上手に活用しましょう

著作権について全てを理解することは難しいです。自分の判断だけでは知らないうちに権利を侵害しているかもしれません。デジタル化が加速して行く中で法律と権利の関係は難しくなっており、時代に合わせた対応が必要となってきます。
上手に活用してよりよい生活を送れるといいですね。

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